草野慎一 作
織田紘二 補綴・演出
ある時代の某所。
山間の村に忠勝とおちよという仲のいい兄妹が母と三人で暮らしていた。
この年の梅雨明けの豪雨はことのほか長く、ようやく晴れ間が広がったある日のこと。おちよが近くの川に水がなくなっているのに気づく。水のない川底に、魚がぴちぴちとはねている。
喜び浮かれて大漁節の二人に、土石流の化身たる泥の大蛇が襲いかかった!
あわれおちよは飲み込まれ、妹を呼ぶ忠勝の声だけが谷にこだまするのだった・・・。
時は流れ、10年の後。
忠勝もすっかり大人になり、隣村から幸江を嫁にめとって、年老いた母とともに暮らしている。
外は雨。10年前を思い起こさせる降りが続いていた。
架け替えたばかりの橋が流されそうになり、またあの川の異変が起こり始めていた。脳裏によみがえる亡き妹の姿。忠勝は泥の大蛇との対決が近いことを予感する。
その時はきた。砦たる堤防の石を蹴散らし、泥の大蛇が忠勝もろとも村を飲み込まんと襲い掛かる。
そこへ響く大音声。隣村より頼もしき幸江の弟軍治があらわれ、助太刀仕候と立ち回り。
先祖代々の威光も借りて、二人の勇士はあっぱれ大蛇をしとめたのであった――。